PS3不調、まだ考察されていない小さな1点。

 PS3の不調については、既に書き尽くされているので今さら付け加える事は少ない。ただ、仔細な事ながら、自分が見た範囲ではまだ言及されていない要素について、1つだけ追加しておきたい。

コアゲーマーなら誰でもそうだと思うのだが、新しいハードというの物には無条件でわくわくするものだ。どんな外観をしており、どんなスペックを持ち、どんな機能を実現してくれるのか。最近のゲーム機は、あまりにも高性能化しすぎているので、実際のところスペックを聞いた所で、その意味がきちんと理解できるわけではない。それでも、なお気になってしまうのがコアゲーマーのサガというものではないだろうか。

思い起こしてみれば、PS2の発表時には大変なインパクトがあった。99年の2月に開催されたISSCC99で発表されたEmotionEngine、その一ヶ月後に公表されたPS2のスペック。当時と現在とでは周辺状況が違うとはいえ、それまで神秘のベールに包まれていたPS2関連の情報が一気に公開され、その話題性と注目度で発売までの1年を乗り切ったように見える。しかし、PS3にはこのようなサプライズはなかった。

PS3のコアとなる次世代CPU「Cell」についても、グラフィックチップ「RSX」についても、2005年のPS3発表時には既に情報が出尽くしており、コアゲーマーにとってはお腹いっぱいの状態だった。*1特にCellに関しては2003年の段階から詳細な解説を読むことが出来たので、この段階でPS3のハードに関するサプライズは消費し尽くされたと言ってもいいくらいだ。結果、延期も手伝ってPS3が発売されるまでの2年近く、コアユーザーにはめぼしい新規情報もなく、PS3発売時にはPS2の時のような新ハードの輝きもオーラも失っていた。

単純な話だが、PS3は発売のあまりにも前から、詳細な情報が出回りすぎたのだ。そして、2003年、2004年頃PS2のビジネスがまだ安泰だった頃に、PS3に関するサプライズを消費してしまい、本当に話題を持続しなければならない、発売直前の時期にすっかり燃料不足を起こしていた。PS3の不調にあたっては、様々に指摘されている要因以外にも、自分にはこんな理由があるように思う。結果、SCEの数々の不手際も加わりスタートダッシュに失敗し現在に至る。*2

*1:ただし、これはSCEの戦略ミスと言うより、特許や論文など周辺文章が公開されたことが主因だが。

*2:まだ勝負が決まったとは思っていないけど。