MMORPGはなぜつまらないのか? そしてMMORPGが死ぬ日。


MMORPGがつまらない理由は2つある。

 1つ目は平等性の問題。多くの場合プレイヤーはゲーム内では自分が主人公でいたいと願う。しかし、数千人が同時にプレイするMMORPGでは、基本的に全てのプレイヤーに平等な環境を与えなければならない。もちろん、様々なランキングや城の争奪などによっていくらかの格差を付ける事は可能だが、それはシングルプレイゲームの自己中心感からは程遠いものである。*1

 2つ目はインフラコストの問題。運営者は、常に数千人から数万人のプレイヤーからのアクセスに耐えうるだけのサーバと回線を用意しなければならない。*2 結果、初期投資と維持費に非常にコストがかかる。そこで、コストを回収するだけの売り上げをあげなければならない。*3 必然的に、プレイヤーを長時間束縛するために無意味なレベル上げやアイテム探しを強要するゲームデザインとなる。こんなゲームが面白いとは開発者達自身も思ってはいないだろう。

 長期的に見れば2つ目の問題には解決の目途がある。このままムーアの法則が生き続ければ、少なくともサーバの問題は解決する可能性があるからだ。現在、100台のサーバを用意しなければできないような処理が、1台で可能になればコストの問題は言うまでもない。*4 サーバと回線のコストによる圧迫から解放された時、開発者は真に自由にMMORPGをデザインする事ができるようになる。

しかし、ムーアの法則がさらに生き続ければ、MMORPG自体が不要になる日が訪れる可能性さえある。高度な演算力を得たコンピュータは、いつの日か、人間の言動さえ模倣できるようになるだろう。ゲーム内でコンピュータが演じる仮想人格達が、実際の人間の振るまいと遜色のないレベルにまで達するなら*5、わざわざ数千人の人間を一ヵ所のサーバに集めてプレイさせる必要性は無い。オンラインで繋がる必要があるのは、本当に気の合う数人の友達だけだ。*6 残りのプレイヤーの役割は全てコンピュータに担当させ、その仮想世界で存分に主人公として楽しめばいい。即ち、そこには最初に指摘した平等性の問題は存在しない。

 足下を見れば、あり得ないような妄想話だろう。しかし、コンピュータは発達し続けていく。人間と区別がつかないほどの仮想人格が、プレイヤーを盛り上げてくれる*7ゲームが登場する頃には、多くのプレイヤーにとって、シングルプレイ・マルチプレイなどという区別は、無意味な記号にすぎなくなっていることだろう。

4月1日には早いけど、こんな話もね。

*1:特にシナリオを占有できない点は致命的だ。

*2:もちろん、人件費や宣伝費も重荷だが。

*3:現在は広告収入などの方法も模索されているようだが。

*4:実際は、サーバが高性能化すればそれに応じて複雑なゲームシステムが導入されるであろうから、そうそう簡単には台数が減ったりはしないだろうが。

*5:特定のゲームに特化されたチューリングテストみたいなもの?

*6:Game*Sparkの記事によると「The Crossing 」というタイトルが興味深いマルチプレイを提示している。

*7:ゲーム内で出会った恋人やライバルや友達やウザい連中も、みんなコンピュータだ。そして彼等は、最終的にはプレイヤーに心地よい結末を提供してくれる。