“アリゾナ老人シリーズ”は、多分偽物

 最近、一部で話題の「アリゾナ老人シリーズ」。ニコニコ動画で日本語字幕をつけてくれた人がいたおかげで、自分も楽しく見ているが、個人的にはlonelygirl15の類の、いわゆるネタ動画ではないかと思っている。

 最初に気付いたのは、毎回かならず登場するDVDデッキにディスクをセットするシーン。そこに映る手の甲が、かなり若い人物のものに見える事。少なくとも、映像の中でアニメを語っている老人の物ではない。それがきっかけで、少し意識して映像を見るようになると、いくつか気になる部分が出てきた。

 まず、冒頭と最終部分は固定カメラで、老人がこちらに向かって歩いてくるシーンと去っていくシーン。1人でも撮影できない事ではないが、少なくとも老人とは別に、もう1人カメラ担当スタッフがいると考えた方が自然だろう。次に、アニメ本編シーンを織り交ぜた作品紹介の編集も、なかなかのものだ。しかも、作品本編になぞらえたオチまで用意された映像もある。また、ジパングのアニメ評では正規版DVDではなく、ファンサブ版が視聴に使用されているように見えた。ここまで来ると、実際の作品評も少し出来すぎという気もしてくる。アクエリオンの3Dアニメパートへの批判など、日本のアニメオタクも顔負けだ。

 こうやって見ていくとアリゾナ老人シリーズは、少なくともこの老人が個人で撮影編集したものではないだろう。実際は、プロか素人かは分からないが(多分、素人)、2、3人のチームで制作していると見るのが妥当だと思う。そしてそうなると、果たしてこの老人は本当にアニメが好きなけだけの謎の老人なのか(そして、その老人をバックアップするチームが存在するのか)、それとも(面白アニメ映像を作りたかった)制作チームに雇われた(もしくは協力している)単なる演技者が居るだけなのか、という疑問に行き当たる。そして自分は、今回のケースでは後者の確率がかなり高いと判断したわけだ。

 企画としては面白いと思うが、一種のフェイクである可能性が高い事は自分も残念だ。なぜなら、アメリカのアリゾナ、その荒野の真ん中に住む謎の老人が、日夜アニメを堪能しながらオタクアニメ評を繰り広げるというのは、日本のアニメオタクにとっては、強烈なファンタジーだからである。しかし、それはファンタジーであるが故に、やはり実在の物ではなかった。

 いったい誰がどんな目的で、こんな映像を作ったのか? 今、気になるのは種明かしの部分。それこそ、NHKネットスターあたりで追求すればいい題材だと思うけど、結局、このまま有耶無耶になってしまうのだろうか。真相が明らかにならず、変な都市伝説じみた日本アニメ武勇伝みたいな物だけが伝承されてしまうのが、一番タチが悪いと思うんだけど。

追伸
英語圏のサイトをきちんと検索すれば、謎はとっくに解明済みですか?


2008年6月27日2時32分
“アリゾナ老人シリーズ”は、やっぱり多分偽物」を追加しました。