え? 民主国家?

 以前から話題に上がっていたとおりマイクロソフトXbox360開発環境「XNA Game Studio」と「Xbox Live」を組み合わせて、ゲーム版Youtubeを展開していくという話。SNS的なコミュニティの運営も視界に入っており面白い試みだと思う。

 キーになるのは開発の簡便さと、配信手段のコストだろう。特に後者に関しては、既に商業的な成功を収めているXbox Liveという優れて強力なプラットフォームに、低コストで自作を流通させる事が出来るという点は、開発者達にとっては大きな魅力と映るだろう。*1 加えて冒頭でも挙げたように、開発者とプレイヤーが一体となったSNS的なコミュニティ機能が働く事によって、アイデア勝負で一発決める、インディーズ系ゲーム開発の世界が大きく活性化するかもしれない。同人ゲームが主流の日本ではピンと来ないかもしれないが、Mod文化の発達するアメリカでは、その潜在力は大きいと思う。

 さらに、マイクロソフトは、Live Anywhere構想の下に最終的にはXbox LiveをWindowsプラットフォームと統合する意志を見せているマイクロソフトが構築する、このゲーム版Youtubeの世界はXboxという閉じた世界に終わらず、Windowsという窓口を通じて、より大きなゲーム文化のバックエンドへと発展していく可能性もある。*2

 ただここで気になるのは、結局このシステムが上流から下流まで全てマイクロソフトの手の内に握られているという事。仮にこれがエコシステムとして上手く回り始めたとしても、その果実が最終的には全てマイクロソフトに流れ込む事になると思うと恐ろしい。例えば、資金力はないけど技術力はある、そんな小さな開発チーム達にとってマイクロソフトの用意したゲーム版Youtubeが成功への常道となってしまえば、次世代のヒットの芽となる才能や人材が全て自動的にマイクロソフトに吸収されてしまう事にならないだろうか。*3マイクロソフトのゲーム版Youtubeという試みは非常に面白いと思うが、そこに建国されるのは決してゲーム業界全体が幸せになれる民主国家などではないと思う。

追伸
このエントリの内容そのものは洋ゲーとMod文化的な視点から、今回の構想を捉えたものとなっていると思う。日本には独自の同人ゲームの文化圏が存在するが、そもそも商業的視点からは「存在しないもの」として扱われているので、今回の話のさらに外側の話として、このエントリからは除外した。

*1:もっともXNA Game Studioで開発されたゲームは、.NETベースの専用のフレームワーク上で動作するそうなので、Xbox360ネイティブのパフォーマンスが出せるわけではないそうだが。

*2:かつてWindowsに統合されたインターネットエクスプローラによって、多くの新規ユーザー達が「インターネット=インラーネットエクスプローラ」と思い込んでしまったように、Windowsに統合されたXbox Liveによって「ゲーム=Xbox Live」という公式がインプリンティングされる時代が来るかもしれない。

*3:既にMod開発の主流がDirectXである事を考えれば実は大差ないかもしれないが。