ファンタジーアースゼロの不確な未来

MAROYAKA2007-03-14

ファンタジーアースゼロ(以下、FEZと略す)の運営にまつわる状況が複雑なことになっている。もちろん内部情報などを持っているわけではないが、タイトルに表示されるクレジットや周辺情報をもとに、そのあたりを整理してみたい。

まず、このゲームの大元の版権を所持していると考えられるのが、スクウェアエニックス。ゲームタイトルやキャラクター等の著作権はもとより、開発や運営に関する権利そのものも所有していると思われる。

次に、このゲームの開発元であるマルチタームFEZに関する著作権等はほとんどほとんど所有していないと思われるが、ゲームの開発そのものを担当しているという強みがある。複雑なシステムを継続的に維持開発していかなければならないオンラインゲームにおいて、マルチタームそのものが開発から外されるというケースは、よほどの事がないかぎり発生しないだろう。

そして現在の運営権を持つのがゲームポットゲームポット自体はモバイルゲームなどを手がけヘラクレスに上場しているアエリアの子会社。また、FEZの中国での展開スクウェアエニックス本体が行っているようなので、ゲームポットが持つ運営権は日本国内に限定されたものと思われる。

ここでややこしくなるのが、開発を担当するマルチタームの親会社がNHNである事だ。NHNと言えば、自社のゲームポータルであるハンゲームを展開している韓国系の企業。当然、子会社が開発を担当するFEZの運営権が、競合他社であるゲームポットにあるのは面白くないはずだ。*1 ところが、運営の権利そのものを持っているのはスクウェアエニックス。NHNの思惑だけでどうとなるものではない。

とりあえずの焦点となるのは、スクウェアエニックスとゲームポッドの契約年数だろう。仮に2006年8月頃に運営権が委譲されたとして、3年契約なら2009年の9月に、5年契約なら2011年の9月に、契約が切れた後、どこが運営を引き継ぐかという問題だ。*2

ケース1 ゲームポットが続投
通常なら順当と思われるパターンだが、上に挙げたようにハンゲームを展開するNHNにとっては面白くない展開だろう。
ケース2 NHNに移行
マルチタームの親会社であるNHNに運営権が移行する。当然、アカウントの引き継ぎなど、面倒な手続きが発生するものと思われる。また、運営ノウハウなどが引き継がれずトラブルが発生することも考えられる。
ケース2.1 知的所有権もセットで売却
ケース1、ケース2と関連して、FEZのビジネス状況によっては版権や運営権そのものが、スクウェアエニックスから運営先に売却される可能性も想定される。
ケース3 スクウェアエニックスに返却
ケース2.1とは逆のパターン。FEZのビジネスが予想以上に好調だった場合、このパターンもありえる。ただし、スクウェアエニックスは現在プレイオンラインを中心とした月額課金制のビジネスモデルを採用しているため、アイテム課金制をとるFEZとの相性は悪い。プレイオンラインと切り離した独自ビジネスとして展開するか、プレイオンラインにもアイテム課金制を取り入れるか、アメリカでソニーオンラインエンタテイメントが展開しているような、月額一定料金で複数のタイトルを自由にプレイできるような形態を取り入れるか、なんらかの路線変更が必要となる。
ケース3.1 開発そのものが別会社に移行
ケース3と関連して、NHNの影響力を排除するために開発そのものがマルチタームから余所に移行するパターン。スクウェアエニックス本体による開発、別途開発会社への委託、など考えられるが上にも挙げたように、開発の継続性という観点からはリスクの高すぎる選択肢となる。マルチタームからFEZ主要開発メンバーの引き抜きを行うという非常手段もあり得るかもしれない。
ケース4 上記以外の別運営会社への移行
FEZのビジネスが極度に低迷している場合、ゲームポットもNHNも運営を希望せず、このパターンが発生することも考えられる。その場合は、スクウェアエニックスから版権や運営権とセットで売却されることもありえるかもしれない。


FEZの将来的な運営が、上記4パターンのどれに落ち着くのか、(自分自身を含めて)プレイヤーにとっては少なからず気になるところだろう。また、FEZの運営にあたっては通常のオンラインゲーム以上のやりにくさもある。例えば、ROの国内運営権を持っているガンホーは、ROにまつわる様々なグッズ展開やアンソロジーコミック等へのライセンス許諾で、ゲーム運営以外の部分からも大きな収益があったはずだ。しかし、その知的財産権スクウェアエニックスに握られているFEZでは、ゲームがいかにヒットしても、そういった方面からの副収入は期待しにくい。ゲーム本体の運営だけで儲けなければならないのだ。

最後にもう1度まとめておこう。FEZの展開にあたって注目すべきは次のポイントにある。

  1. 著作権運営権:スクウェアエニックス
  2. 開発元:マルチターム(NHN子会社)
  3. 運営元:ゲームポット

事業領域において競合する独立した3つの会社に、権利・開発・運営が分散されており、それぞれがどう転がるかによって展開が大きく変動する点だ。

2006年の運営当初、FEは企画運営スクウェアエニックス、開発マルチタームというシンプルで分かりやすい構図だった。それが2006年の11月からのゲームポットへの運営移行、さらに同年12月のNHNによるマルチタームの子会社化という流れで、様々なオンラインゲーム運営会社が絡む複雑な構図になってきた。そして、運営移行後のアイテム課金制の導入によって、FEZのプレイヤー数が急速に増加し(*3)ビジネス的にも好調に見える点もこういった流れを加速させただろう。この混沌から、FEZはいかなる展開を見せるのか、興味深く注目していきたい。

*1:マルチタームそのものは多数のタイトルを手がけているので、FEZが買収にどこまで影響を与えたのか不透明だが。

*2:その頃までFEZが存続しているのかという問題は、とりあえず置いておく。

*3:スクウェアエニックス時代に1サーバ運営だった物が、2007年2月に5サーバ体制にまで拡充されている。