ファンタジーアースゼロの悲劇 その2

FEZスクリーンショット


 前回のエントリでは、ファンタジーアースゼロ(以下FEZと略す)におけるプレイヤー層の二極化を挙げた。この状況を改善する方策はあるのだろうか。


1つめは、単純に戦争のルールそのものを変えてしまう方法がある。前回のエントリで指摘した「目先の『戦闘』に勝利して敵兵を殺し続ける事が、必ずしも『戦争』全体の勝利には直結していない」という分かりにくさを排除し、戦闘の結果と戦争の結末を一致させるようルールを改変すればいい。しかし、これを実行するとFEZはその魅力の大半を失う事になるだろう。単に戦闘のみによってチームの勝敗を競うアクションゲームなら、FEZより遥かに優れたゲームが既に多数リリースされているからだ。さらに付け加えれば、目先の戦闘と戦争の結末が一致しないという分かりにくさは、同時に、チームが軍隊として有機的に活動している事の裏返しでもある。そしてこの有機性こそが、FEZを単なるアクションゲームとは一線を画した戦争ゲームへと磨き上げてもいる。戦争というコンセプトの放棄はFEZの存在意義に関わるだろう。

2つめに考えられるのは、「戦闘をプレイしたい層」に戦闘ゲームへの移住を薦める方法がある。上にも挙げたように、単なるTPSのオンラインアクションゲームとしてみた場合、FEZより遥かに優れたゲームはごまんとある。目先の戦闘だけを楽しみたい層は、より戦闘に特化したゲームに移動すればいいわけだ。しかし、これは商業ゲームとしてはあり得ない選択肢だろう。そして、アクティブなプレイ人口そのものを削っていこうという方向は、ゲームの先細りにもつながる。

では3つめの結論としては、地道ではあるがルールの洗練とプレイヤーへの啓蒙となるだろう。初めてFPS系のアクションゲームの魅力を知ったプレイヤー層が、まず戦闘行為に熱中することは悪い事ではない。しかし、同時に意識が「戦闘」から「戦争」へとステップアップしていけるナビゲーションが必要だ。このナビゲーションには2つの方向性がある。一方が、建造物のバリエーション強化や召喚獣の多様化といったルールの深化だ。プレイ内容をより充実させるとともに、その楽しさが戦争全体への意識拡大へと向かうゲームの拡張が必要だ。将来的には、Savage*1のような指揮官システム*2の導入が必要かしれない。もう一方が、前回のエントリで指摘したランキング問題の改善や領域面積による与ダメを分かりやすく表現するなど、これまで特に「戦闘をプレイしたい層」に誤解を招きやすかった部分を改修していく必要がある。これには、自軍占領面積により発生する敵軍与ダメ情報の明確化など、公式サイトの情報の強化なども含まれる。


最終的にはありがちな結論だが、ゲーム内容の充実によって「戦闘をプレイしたい層」に、強制することなく自然とFEZの本来のコンセプトである戦争そのものの楽しさへと、意識を向けさせていくよう中身を洗練していくしかない。そしてそれは、FEZが本来進むべき道だったはずだ。一時期、ゲーム開発元は「カジノ島」の実装など、戦争の本質とはかけ離れたどうでもいい枝葉のアップデートを進行させるなど、その意識を疑うような方向を向いていたが、ここに来て徐々に軌道修正を開始したようで、少し安心している。

FEZは、まだまだ問題の多いゲームだが、国産戦争ゲームとして充分なポテンシャルを秘めたタイトルだと考えている。それだけに、今後のアップデートに期待している。今回のエントリでは触れる事のできなかった、FEZの戦争構造やFEZと似た要素も多い米国産戦争ゲーム「Savage*3との比較なども、機会があればとりあげてみたい。

*1:アメリカ S2 Games の開発したオンラインアクション戦争ゲーム。

*2:Savageでは、各チームの資源管理や作戦を統括する司令官プレイヤーが存在する。

*3:日本語版wikiココ