ファンタジーアースゼロの悲劇 その1

FEZスクリーンショット


 ファンタジーアースゼロ(以下FEZと略す)は、敵味方50人づつのチームに分かれ勝敗を競うオンラインアクションRPG。最大の特徴は、TPSRTSを組み合わせた戦争ルール。三人称視点でアクションゲームをプレイしながら、フィールドで採取した資源を消費して建造物を建てたり召喚獣を呼び出したりと、RTS的な戦争ゲームを楽しめる。


このFEZでは、現在、プレイヤー層の深刻な分離が進行している。即ち「戦闘をプレイしたい層」と「戦争をプレイしたい層」への二極化である。

萌を意識した取っつきやすいグラフィックと無料でのプレイが可能(アイテム課金制)となっているため、FEZにはこれまで主に韓国産 MMORPG のプレイ経験しか無かった層が、大量に流れ込んでいるように見える。*1これらのPCゲーム初心者層にとってFEZは、初めてプレイするTPSゲームであり、今まで注目されてこなかったFPS系のアクションゲームの楽しさを初体験しているプレイヤーも多いようだ。

同時に、既に多数のFPSやTPSをプレイしてきたPCゲーマー層もゲーム内には存在している。この層が注目するのが、RTSのルールを取り入れた戦争ゲームの部分である。FEZはPCアクションゲームとしてみた場合、そのレスポンスやプレイの奥深さといった点で、決して優れたゲームとは言えない。しかし、建造物による支配面積の変動や召喚獣の運用による戦況の変化といった要素は、オンラインアクションゲームとしても比較的目新しい。


ここで問題になるのが、このゲームにおいては、目先の「戦闘」に勝利して敵兵を殺し続ける事が、必ずしも「戦争」全体の勝利には直結していない、という事実である。それどころか、目先の戦闘の勝敗に拘る事が、結果として味方全体の足を引っ張るケースが少なからず存在する。
この分かりにくさ故に発生するのが、目先の戦闘のみを追求して戦争全体に意識が向かない層と、戦争そのものの勝利を目指して、目先の戦闘より全体の勝利を目指す層の乖離である。これが冒頭で挙げた「戦闘をプレイしたい層」と「戦争をプレイしたい層」の事であり、FEZの悲劇である。この二層の乖離は深刻であり、ゲーム内で様々な悲劇(むしろ、喜劇か)を巻き起こしている。


FEZの戦争で勝利を得るためには、戦闘、建築、召喚獣運用といった複数の要素が絡むため、戦場においては自然発生的に様々な役割が生まれる。資源の採掘、資源の管理、建造物の建築…etc、前線での戦闘はこれら様々な役割の中の1つに過ぎず、前線の戦闘を優位に進めようとするなら、むしろ、前線以外の後方でのマネジメントが重要になってくる局面も多い。

しかし、そこで問題となるのが前述した「戦闘をプレイしたい層」の意識だ。この層は、FEZで初体験するFPS的なアクションゲームの楽しさのみに満足し、戦争全体の趨勢に対する意識が薄い。結果、最前線で不毛な無双プレイを続けながら、「戦争をプレイしたい層」が後方で行っている様々な支援活動の恩恵だけは、受ける形となる。
そして「戦闘をプレイしたい層」自身も戦争で勝利したいとは思っているため、戦争そのものが勝利に終わった時、『前線で大暴れして楽しかった+戦争に勝利した』組と、『採掘や資源管理業務等の裏方をこなした結果、美味しい所は前線組にもっていかれた』組に分離するという不毛な結末が待ち受けている。

この問題に拍車をかけるのが、戦争終了後に表示されるランキングである。このランキングでは、単純に敵兵への与ダメージやkill数といった要素でしか順位が表示されない。その結果、戦争全体への影響を考えて様々な支援活動を行うより、何も考えずに最前線で突出して回復すら行わずに大暴れした方が、(全体の足を引っ張っているにも関わらず)ランキングでの評価が上になる、という現象が頻発する。このため「戦闘をプレイしたい層」の意識は改善されるどころか、逆に症状が悪化していくケースすら存在する。


それでは、この状況を改善する方策はあるのだろうか? 長くなってしまったので、続きは次回エントリにて。

*1:もちろん、これは公式サイトやネット上の掲示板を見た範囲での個人的感想に過ぎないが。